Logoseum│博語館

Shin Sugawara // 菅原真

第3章│経済格差と性愛市場

1. 男女の賃金格差

 現代日本は、OECD諸国の中でも男女の賃金格差が大きい国のひとつである。
 女性は非正規雇用に集中し、昇進や賃上げの機会に乏しい。
 その結果、経済的に自立しにくい構造が続き、若年層やシングルマザーの「パパ活」や「夜の仕事」依存にもつながっている。

 この格差は、単なる統計上の差異ではない。
 「生活を支えるために身体を資本化する」という、切実な選択へと人々を追い込んでいる。


2. 闇市場に流れる巨額の資金

 風俗産業、AV、パパ活、シュガーベイブ。
 これらはすでに巨大な市場として存在している。
 しかし、課税も透明な会計もなく、裏経済として扱われている。

 闇市場のまま放置すれば、搾取が横行し、反社会的勢力の資金源となり、性感染症管理も行き届かない。
 本来なら国家財源として教育や福祉に回せる資金が、非合法の領域に吸い込まれている


3. 合法化と新しい稼得機会

 性愛を「合法サービス」として制度化すれば、

  • 提供者は「雇われ労働者」ではなく、ライセンスを持つ個人事業主として活動できる。
  • 搾取構造を排し、収益を提供者自身が受け取れる。
  • 男女を問わず、需要に応じた参入が可能になり、性的市場はジェンダーに限定されない稼得機会となる。

 風俗を取り上げた番組で確認できるように、女性利用者の動機も男性利用者と変わらない。
 「自分の欲望に合うから利用する」。
 この普遍性を踏まえれば、提供側も男女・性別を超えて多様に参入できるはずだ。


4. 再分配メカニズムとしての性愛税

 エロス・ゲートウェイの特徴は、性愛市場を国家財源に組み込み、税収の100%を国民に還元する点である。
 同時に、トー横に象徴される居場所のない未成年に「家庭でも学校でもない第三の居場所」を提供し、保護・育成する設計にも踏み込む。

  1. 特区内の取引には「性愛税」を課す。
  2. その収入を一般財源に回さず、全額をベーシックインカムとして均等配分する。
  3. 提供者・利用者が活動するほど、参加しない人も含めて国民全員が利益を得る。
  4. エロス・ゲートウェイ組織には、施設内に未成年者への教育・福祉施設を整備することを法的に義務付ける。この義務は、既存の教育基本法・児童福祉法などと整合する形で設計される。(第6章)

 つまり、性愛市場は「格差を固定する仕組み」ではなく、格差を縮小する再分配装置に転じる。
 ここでは、性愛市場に参加する人だけが潤うのではなく、むしろ参加しない人も含めて社会全体が恩恵を受ける。
 これは「納税者=社会貢献者」という従来の構造を超え、性愛市場に関わる行為そのものが社会的連帯を生み出す仕組みとなる。

 提供者にとっては、収入を申告し納税することで職業的地位が確立し、社会的信用(ローンや社会保障)を得られる。
 利用者にとっては、消費がそのまま再分配に直結し、「楽しむこと=社会を支えること」となる。
 そして、参加しない人々にとっても、配分や公共サービスという形で確実に利益が還元される。

 このように、性愛市場は単なる娯楽や消費の場ではなく、全員に利益が波及する新しい社会契約の基盤へと変わるのである。


5. 結論:未開拓セクターとしての性愛

 性愛を闇市場に閉じ込めれば、格差は広がり、搾取は続く。
 だが、制度化すればそれは「最後の未開拓セクター」として、

  • 提供者には公的に認められる収入源と社会的信用を、
  • 国家には新しい財源と再分配の装置を、
  • 国民全体にはベーシックインカムと公共福祉の恩恵を、
  • 未成年には家庭や学校に代わる安全な第三の居場所を、

 もたらすことができる。

 性愛を制度に組み込むことは、男女の経済格差を縮小するための現実的かつ強力な手段であると同時に、教育・福祉を強化するための新しい財源設計でもある。
 性愛市場の舞台となる「性愛リゾート(第5章)」は、単なる産業モデルではなく、社会全体の出口設計(福祉国家の再構築)に直結する実験場なのである。


📑 エロス・ゲートウェイ構想 第一部「思想編」目次