Logoseum│博語館

Shin Sugawara // 菅原真

終章│性愛と家族の再設計は待ったなしの緊急課題である

※本章では、日本語のあいまいさを回避するため、すべての関連する単語に(child-rearing / education / caregiving)を併記している。

  • 養育(child-rearing):子どもの衣食住や日常的ケアを含む生活基盤。
  • 教育(education):知識や技能の体系的伝達。
  • 介護(caregiving):障害児ケアや高齢の親の介護を含む、生活支援と身体的ケア。

1. 現代社会の根本課題

 本シリーズを通じて明らかになったのは、現代社会が抱える以下の課題である。

  1. 闇市場リスク:パパ活やソープランドなどの黙認構造が性感染症・搾取・脱税を生んでいる。
  2. 家族制度の破綻:ネグレクト(child-rearing 放棄)、障害児ケアや高齢者介護(caregiving)の限界。家庭依存はもはや人命を守れない。
  3. 経済格差:男女の賃金格差や非正規雇用の偏在が、裏経済への依存を加速させている。
  4. 倫理と現実の二重構造:不倫を断罪しつつ娯楽として消費する、表と裏の矛盾が拡大している。

 さらに第9章で論じたように、

  • 婚外子=承継モデルが生んだ差別、
  • 一夫一婦制=歴史的偶然の絶対化、
  • ひとり親=家族一任による養育(child-rearing)・介護(caregiving)の過重負担、

 といった諸問題もまた、同じ制度的根源に由来している。


2. エロス・ゲートウェイの思想

 禁酒法の歴史が示すように、「禁止」は解決ではない。
 性愛も同じであり、管理・課税・文化化によってこそ健全化できる。

 エロス・ゲートウェイ(EG)は「性愛はリゾートで、子育て(child-rearing)と教育(education)は社会で」という制度分担を実装する。
 性愛と養育(child-rearing)を家庭に閉じ込めず、公共性を持つ制度の中で安全に循環させることこそが目的である。


3. 国家戦略としての実装

 EGは単なる思想実験ではなく、現実に制度として実装できる国家戦略である。

  • 性愛リゾート:温泉地や都市を拠点に、性愛ウェルネス産業として堂々と展開する。
  • 性愛税と再分配:闇市場の資金を透明化し、性愛税の100%をベーシックインカムとして国民に還元する。
  • 提供者の社会的承認:収入を申告し、納税することで職業として認められる。ローンや社会的信用が保証される。
  • 出口設計としての福祉:未成年を徹底排除しつつ、教育(education)・労働・居住を提供し、成人後の選択肢を保障する。
  • 育児の先輩の活用:子育て(child-rearing)を終えた世代を「セカンド・ペアレンツ」として制度化し、経験と情熱を社会資源に転換する。

4. 介護(caregiving)の位置づけ

 エロス・ゲートウェイは、性愛と養育(child-rearing)・教育(education)の制度的分離を目的とする構想であり、介護(caregiving)の直接的な制度設計を担うものではない

 障害児ケアや高齢者介護もまた「家庭に閉じ込められた負担」であり、家族依存モデルの破綻を象徴している。
 しかしEGはそれを「隣接課題」として認識するにとどめ、制度的介入は別の社会改革に委ねる。

 EGが担うのは、「居場所のない未成年を守り、性愛と養育(child-rearing)・教育(education)を再設計する」ことである。
 介護(caregiving)の制度改革は、EGと並行して議論されるべき次の課題である。


5. 結びに

 闇市場リスク、家族制度の破綻、経済格差、倫理と現実の二重構造。
 加えて、不倫・婚外子・一夫一婦制・ひとり親の過重負担、そして介護(caregiving)の孤立。

 これらを同時に解決するためには、常識に縛られず、性愛と家族制度を一度スクラップアンドビルドするしかない。

 エロス・ゲートウェイは、その入口であり、未来への扉である。

 性愛を罪から制度へ、養育(child-rearing)・教育(education)を家庭依存から社会契約へと移し替えることで、私たちはようやく「性愛の自由」と「人命の保護」を両立させることができる。

 介護(caregiving)の課題は、EGの射程外にあるが、同じ構造的問題として隣接して存在している。
 この切り分けを明確にすることで、EGは自らの焦点をぶらさず、未来を切り拓く制度改革の第一歩として位置づけられる。


📑 エロス・ゲートウェイ構想 第一部「思想編」目次